【風景写真を考える vol.5】 どこか遠くでなく、内なる風景を(2/3)

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どこか遠くでなく、内なる風景を

あらかじめ用意された情報によって、絶景に行った時の感動が目減りすることを先の記事で書きました。つまり、情報環境の変化でこれからの風景写真は必ずしも秘境や絶景である必要はないのかもしれません。そして、いい風景写真とは見る側に何らかの興味や共感を持ってもらうことにあると思います。

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いい写真とは?

いい写真の要素はいくつかありますが、その中のひとつに作品と作家の関係が見られることが挙げられます。このあたりは【よくある相談 vol.1】 作品テーマを探しています に書きました。

テーマとは 背伸びするものでなく、その人が取り組んでいて不自然でないものがいい。第三者から見て本人と遠い関係にあっては説得力に欠ける。

作品と作者に親和性のあるものは見ていて気持ちいい。次回作を応援したくなるし、きっとそれは今以上のものになる。

 
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作品と作者に親和性

高校生の時、共通のものをクラス全員でデッサンする授業がありました。そこで特にテーマはなかったと思うのですが、出来上がったものに描き方、色づかいに違いがありました。それは個性や概念の可視化とも言えます。

一方、カメラはシャッターボタンを押すだけで像が手に入り、条件が同じであればその像に違いはありません。突然立ち上がった像を個性とは言いがたく、作家は写真と意図(自分)を近づけるために、撮影の前後にデフォルメする場合があります。(もちろん関係性を持たないことも機能の中のひとつです。)

撮影の前後にデフォルメする様々な方法がありますが、例えばシーンを意図的に選んだり、象徴するような小物を用意したり、ライティングを組むようなセットアップと言われるものがあります。そのほか、デジタル編集をする・写真にドローイングをすることも見受けられますが、表現のために写真を破ったり燃やしてしまうといこともあります。

ほかにイメージをたぐり寄せるにはテキストを使って、作った理由や見もらいたい方向性、ストーリーを説明する方法もあります。これはステートメントと言われるもので、写真に写っていないものをテキストで補う役割が求められます。

例えば誰でも撮れるもの、誰でも撮っているものでもステートメントを与えることで写真と撮影者の間に関係性・親和性が生まれ作品として成立すると感じています。

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写真に手を加える・テキストを使う

最近の写真展で、写真をデフォルメする・ステートメントを与えるもので印象的だった写真展を紹介します。

 

清水はるみ 写真展「icedland」

アイスランドは氷河や火山がある自然豊かというより、地球そのものの活動を感じられる特異な景観があります。タイトルにあるようアイスランドの自然風景の写真展なのですが、さらに写真自体をまるごと凍らせて板状の氷や破片で絵柄をコラージュするユニークな内容でした。

>> 清水はるみ 写真展「icedland」

火山が噴火し、氷河が押し寄せ、今も大地が裂け続けるなど地球のダイナミックな営みを感じられる土地、アイスランド。目の前の光景を瞬間のうちに凍結させるような写真の特性を踏まえ、いまのアイスランドの手つかずの自然を写真ごと凍らせました。

 

石川 竜一 写真展「絶景のポリフォニー」

カテゴリは風景写真ではないですが、最近見たもので印象的な写真展のひとつです。

>> 石川 竜一 写真展「絶景のポリフォニー」

この島は、人間の欲と悲しみにふりまわされてきた。だからこそ平和で豊かな南の島を夢見てきたし、そうであろうとしてきた。ただそれは、抑えることのできない欲と、それによって生まれるカオスをいつも孕んでいる。

写っているものの多くはどこか癖のある沖縄のストリートスナップなのですが、沖縄出身の石川竜一氏がそれらに「この島は、人間の欲と悲しみにふりまわされてきた。」という言葉を添えることで、スナップ写真からやりどころのないドロッとした感情に変換します。作者であり当事者であることは、それだけで十分に写真表現の一片を担っています。

 

自立する風景写真

写真の良さは手軽に像を作れることにありますが誰でも写真を撮り、誰でも情報を引き出せるようになって、絶景写真の感動が薄れ、風景写真が作品として自立するための興味と在り方が変わってきました。次はこれから開催される見逃せない風景写真展を紹介します。

>> 【風景写真を考える vol.5】 どこか遠くでなく、内なる風景を(3/3)

 

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